4月13日 読売新聞 シリーズ 社会と健康(4)歯の地域格差 解消へ

福岡県から北西約140キロの日本海に浮かぶ離島、長崎県対馬市。厳原(いづはら)南保育園の4、5歳児クラスで、昼食後の日課が始まった。
歯磨き後、園児のコップに、保育士が1口分の液体を入れる。園児は約1分間、ブクブクとうがいをすると、慣れた様子でコップにはき出した。濃度の低いフッ素入りの水で口をゆすぐ「フッ化物洗口」。歯の表面のエナメル質が溶け出すのを防ぎ、溶けた部分を修復する虫歯予防だ。全国の保育園、幼稚園、小中学校の1割が導入し、対馬市は全ての保育園と幼稚園で、4、5歳児を対象に行っている。

1995年度当時、全国平均の3歳児の虫歯数は2・19本、長崎市保健所管内で3・16本だったのに対し、対馬保健所は5・32本。同じく離島の上五島保健所の6・67本に次ぎ多かった。離島は県平均に比べ、1歳以上平均寿命も短い。

島は1次産業が中心で共働きの世帯も多い。親は高卒が中心だ。3歳児の虫歯の地域格差は親の学歴が影響するという研究もある。保育園長の素花(そばな)真澄さん(59)は「以前は菓子やアイスを食べながら登園する子供がみられた。忙しい親が子供の歯を気遣う余裕はなく、虫歯予防の意識も低かった」と振り返る。

危機感を抱いた対馬市歯科医師会が注目したのが、新潟県が70年から取り組んできたフッ化物洗口だ。同県は12歳児の平均虫歯数が0・68本と12年連続で日本一少ない。

同歯科医師会は導入に向け、親や園の職員への説明会を重ねた。99年度には4歳児で5・8本、5歳児で6・75本だった平均虫歯数は、2011年度にそれぞれ3・5本、4・5本に減少した。保護者からは「歯磨きの意識が高まった」との声が目立つようになった。

 

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